日露天然ガスパイプライン事業計画概要

本事業の全体像

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 本事業はガス田からサハリン南部までのロシア側パイプラインと、サハリン南部から東日本地域の需要地とをパイプラインで直接つなぐ、きわめて合理的かつシンプルなガス輸送・供給事業です。この南サハリンから東日本への幹線パイプラインを利用して、ガス販売事業、ガス発電事業、コージェネレーション事業、都市ガス事業、圧縮ガス事業、ガス化学事業、情報通信事業など、多様な関連事業を展開することが可能となります。

[注]
左図は政府の広域天然ガスパイプライン整備方針(仮想ルート)に東日本天然ガスパイプライン計画を加えて作成

本事業の経済的実施可能根拠

供給源の確保

 JPDOはこれまで長年にわたりロシア連邦政府のご協力を頂きながら、サハリン3等極東天然ガスパイプラインからの供給を前提として計画を進めてきました。本事業のガス供給源はこのロシア側パイプラインに、日本側パイプラインを接続することとしています。

需要先の確保

 産地直送の低コストガスは極めて強い競争力を有するため、パイプラインルート周辺地域における喪失原発補完用ガス発電所の設置や既存発電所の燃料転換及び都市ガス原料等により、このパイプラインに必要なガス量の多くが消費されることとなります。この他にもパイプラインルート周辺各地域のコージェネレーションや、再生可能エネルギーのサポート用電源、産業用・業務用需要並びに各種ガス利用事業などにより、需要量は十分確保可能です。

本事業の技術的実施可能根拠

ロシア側の整備

 サハリン北部のガス田から南部へのパイプラインは、既にサハリン2によって整備され操業されている通り、技術的に特段の問題はありません。また、サハリン南部から北海道北部については、既にガスプロムグループの大手エンジニアリング会社が中心となって調査し、米欧及び日本の大手エンジニアリング会社もこれを検討して技術的に特段の問題もなく実施可能であるとの結論を得ています。

日本側の整備

 既に北海道北部から青森県東部までを、米国と日本の大手エンジニアリング会社が共同で調査し、技術的に実施可能であることを裏付けています。青森県東部から首都圏東部までは国道等の公共インフラを基本とする陸上ルートで実施することとしているため、国土交通省等の政府のご協力を頂くことによって円滑に実施することが可能です。もちろん、漁業権などの環境問題もありません。

地震対策等

 2004年の新潟大地震や2011年の東日本大震災でも、幹線パイプラインには支障がなく正常であったことにより、日本の耐震技術は世界的にも優れていることを裏付けています。現在、政府が全国的に広域天然ガスパイプラインを整備する方針を打ち出していることも、日本の耐震技術の確かさを前提としています。

本事業の実施体制

資金体制

 本事業は採算性やキャッシュフローが明確であるため、日本及び外国の多くの関係経済界との協力により、必要資金の調達については十分可能となっています。既に国際投融資機関等内外関係機関により本事業実施に必要な資金の枠組みは確保されています。

組織体制

 日本側は本事業関連事業会社や投融資機関にご協力を頂き、外国側はロシア企業をはじめ、これまで本事業の実施に向けてご協力を頂いてきた米国・欧州・アジア・豪州等の有力企業の参入を予定しています。

本事業の実施メリット

日本側のメリット

 本事業を実施することにより、現在の日本政府が直面している重要懸案事項に貢献することが可能となります。すなわち、(1)日露平和条約締結促進政策と東アジア平和共存政策、(2)日本経済成長戦略と国際経済協調政策、(3)東日本大震災による被災地復興政策と必要なインフラ整備政策、(4)国土強靭化政策と地方創生政策、(5)原子力発電所の減少政策と必要な補完電源の確保政策、(6)広域天然ガスパイプライン整備政策と必要な民間主導による実施政策、(7)再生可能エネルギー普及政策と必要な安定的供給方法の確保政策、(8)ガス輸入コストの削減政策と必要な輸入手段の多様化政策など、いずれの国家政策に対しても大きく貢献することが可能となっています。

ロシア側のメリット

 本事業の実施によりロシア側は大きな利益を確保することができます。すなわち、(1)LNG基地からの輸出とは別枠で、大量の天然ガスを長期安定的に日本へ輸出することができること、(2)サハリン3キリンスキー等のガス田からサハリン南端までは至近距離であるため、ロシア側パイプラインの建設コストは欧州や中国に比べて極めて少ないこと、(3)サハリン南端までのパイプラインを直接日本側パイプラインへ接続するため、巨額のコストを必要とするLNG液化基地等の設備投資が不要であること、(4)このパイプラインを通じて日本国内のガス発電所等の様々な下流事業へ優先的に参入することが可能となること、等々です。

着実な実施のために

 本事業は日露首脳会談の合意に基づいて、既に民間主導で本格的実施準備作業を進めておりますが、与党・政府・地方・経済界等のご理解とご協力を頂くことはもとより、需要家や消費者の皆様方のご理解とご協力を頂くために必要な活動を進めてまいります。また、ロシア側につきましても互恵的経済発展の大局的観点から、ロシア側における実施体制を整えて頂き、日露連携の強化と米国・欧州・アジア・豪州等の関係機関の協力・参加を促進することにより、本事業の実施に向けて着実に前進してまいります。